オーディオグレードとミュージカルグレード
勝手に言い続けている言葉かもしれませんが、
「ミュージカルグレード」。
これは、20代の頃から少しずつ感じてきたことです。
Brush eight を2013年にオープンした当初から、
「オーディオグレードの方向性に最大限振ること」よりも、
ミュージカルグレードの塩梅こそが大切だと考えてきました。
その考えを軸に、ペダルやシールドの製作も行ってきました。
そして最近、あらためて強く感じているのが、
「オーディオグレード」と「ミュージカルグレード」のバランスについてです。
写真に写っている電源ケーブルやスピーカーケーブル、ほんの一部ですが、
楽器・機材用と、モニター用で使い分けていたり、
これも、そのバランスの一つだと思っています。

オーディオグレードとは
音の世界ではよく、
・クリア
・解像度が高い
・歪みが少ない
・フラット
・ノイズが少ない
・レンジが広い
といった言葉が評価軸になります。
もちろん、これらはとても大切な要素です。
特にミックスやマスタリング、検証作業においては、
オーディオグレードな正確さは不可欠だと思っています。
オーディオグレードな機材は、
・情報量が多い
・再現性が高い
・ノイズや歪みが少ない
・音がクリアで分かりやすい
音を録る、音を判断するための音。
そして、音楽を「正しく録って、正しく聴く」ために、
非常に重要な存在です。
それだけでは音楽にならない瞬間
一方で、それだけでは
「ギターらしくない」
「音楽にならない」
と感じる瞬間も、確実に存在します。
ミュージカルグレードとは
数値的に見れば、
・歪みもある
・色付けもある
・決してフラットではない
それが、ミュージカルグレードの音です。
しかし、
・ピッキングへの追従性
・倍音の出方
・音の立ち上がり
・粘りや艶感
オシロスコープでは判断できない、
目に見えない部分が、
演奏する側の感情やニュアンスに直結します。
これはまさに、
音楽を生むための音
だと感じています。
ギターサウンドで考えると、答えはとてもシンプル
ギターアンプを例にすると、分かりやすいかもしれません。
もしギターアンプが、
完全に最高級のオーディオグレードだったらどうでしょうか。
レンジは広く、正確で、フラット。
音も固く、歪みにくい。
結果として、
弾いていて心地よさがなくなる可能性も大きいと思います。
実際、楽器用アンプ、特に真空管アンプは、
「歪むこと」「クセがあること」を前提に設計されています。
それは欠点ではなく、
音楽に必要な要素です。
どちらが正しいか、ではない
オーディオグレードが正しくて、
ミュージカルグレードが劣っている、
という話ではありません。
逆でもありません。
役割が違うだけです。
・判断するための音
・表現するための音
この2つを混同すると、
機材選びも、音作りも、迷子になります。
Brush eight / First Impact の考え方
Brush eight、First Impact では、
レコーディング時の電源周りやケーブルも含め、
もちろんオーディオグレードの要素も取り入れています。
ただし、
スタジオを借りたテストや、
実際のレコーディング現場で何度も検証してきた結果、
すべてをオーディオグレードに寄せすぎると、
ギターサウンドが固くなり、歪み方も変わる
という結論に至っています。
そのため、
・アース
・ノイズ処理
・グラウンドループ
・電源の取り方
これらは非常に重要視しつつ、
電源タップやケーブル類は、
オーディオグレードとミュージカルグレードのバランスを取っています。
これは、
ギターサウンドを前提とした設計であり、
私・中村、そして直塚が常に心がけている部分です。
機材ごとに、役割を分ける
例えば、
・ギターアンプの電源ケーブルは、あえて安価なものを使うこともある
・レコーディング機器やモニターには、オーディオグレード寄りのケーブルを使う
・ギターに挿すケーブルはミュージカルグレード
・マイクやインターフェースはオーディオグレード寄り
ただし、この
「オーディオグレード寄り」
という感覚が非常に重要で、
音が固くなりすぎないよう、
選定したり、自ら製作したりしています。
ハンダについても、
必要に応じてヴィンテージハンダを使うことがあります。
Brush eight が大切にしていること
Drive X をはじめ、
当店で扱っている機材やカスタムでは、
・音の情報量
・ギターのレンジ
と同時に、
・ピッキングへの反応
・倍音の質
・弾いたときの気持ちよさ
この両方を、常に意識しています。
最終的な判断基準は、とてもシンプルです。
「音楽として成立しているかどうか」
そこに尽きます。
音楽は、スペックでは完成しない
オーディオグレードだけでは、
音楽は完成しません。
ミュージカルグレードだけでも、
成立しない場面があります。
だからこそ、
今どちらが必要なのかを見極めること。
その視点を持つことが、
機材選びでも、音作りでも、
一番大切だと思っています。
最後に
音は、数字ではなく、
最終的には 「人がどう感じるか」。
その当たり前のことを、
これからも忘れずに、
機材と向き合っていきたいと思います。


